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なぜ、わかっているのに変えられない?~サイコドラマ・役割(ロール)理論から~

わかっているのに、変えられない | みんなの心理相談室 cont-e

Role Theory × Psychodrama

「わかっているのに、
変えられない
——ロールという視点から考える

同じ場面が繰り返される。意志の問題ではありません。
そこには、深い理由があります。

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「また同じことをしてしまった」

怒鳴るつもりはなかったのに、子どもに声を荒げてしまった。

「今度こそ断ろう」と思っていたのに、頼まれるとついYesと言ってしまった。

「もっと素直に甘えればいい」とわかっているのに、大切な人の前に来ると心が閉じてしまう。

変えたいと思っている。変えようとしている。なのに、また同じ場所に戻ってくる。

このとき、「意志が弱いから」「自分はダメな人間だから」と自分を責めてしまいがちです。しかし、そうではありません。この繰り返しには、もっと深い理由があります。

01

ロール(役割)とは何か

サイコドラマの創始者J.L.モレノは、人間の行動と内面を「ロール(役割)」という概念で捉えました。

ロールとは、単に「お母さん」「部下」「友人」といった社会的な立場のことではありません。それは、ある場面・ある関係の中で、自分がどのように感じ、考え、行動するかという、ひとつのまとまったパターンのことです。

たとえば、「職場では頼れる先輩ロール」を担っている人でも、実家に帰ると「何も言えない末っ子ロール」になる。あるいは友人の前では「明るいムードメーカーロール」なのに、恋愛関係になると「自分を消してしまうロール」になる。

私たちは、状況や相手に応じて複数のロールを生きています。

02

「変えられない」の正体——ロールの固着

ロールは、本来は柔軟なものです。場面に応じてロールを切り替えながら、私たちは毎日を生きています。

しかし、ある体験を通じてロールが固まってしまうことがあります。これを「ロールの固着」と呼ぶことができます。

幼い頃、感情を出すたびに「泣くな」「そんなことで怒るな」と言われ続けた子どもを想像してください。その子は生き延びるために、「感情を表に出さないロール」を身につけます。それは当時、とても賢い適応でした。

しかし大人になり、親密なパートナーができたとき、そのロールはもう必要ではないのに、自動的に起動してしまいます。「もっと気持ちを話してほしい」と言われるたびに心が閉じる。変えたいのに、変えられない。

これは意志の問題ではありません。そのロールが、かつての自分を守ってくれた、大切なものだからです。

03

ロールには「相手役」がいる
——ロール・カウンター・ロール

モレノのロール理論で重要なのは、ロールは必ず「相手のロール(カウンター・ロール)」とセットになって成立するという考え方です。

「甘えられない自分のロール」には、「甘えを受け取ってくれなかった誰かのロール」が対応しています。「怒鳴ってしまう親ロール」の背後には、「怒鳴られ続けた子どものロール」が生きているかもしれません。

つまり、過去の関係の中で形成されたロールが、今の関係の中で再演されているのです。目の前にいるのは職場の上司なのに、気づけば子どもの頃の父親に接するように振る舞っている——そういうことが、私たちには起きています。

04

ドラマが「気づき」をもたらす

こうした固着したロールを「頭で理解する」だけでは、なかなか変わりません。なぜなら、ロールは言葉よりも先に、体と感情の次元に刻まれているからです。

ここにサイコドラマのアプローチが意味を持ちます。サイコドラマでは、過去の場面や今抱えている関係を、実際に「演じる(act out)」ことができます。言葉で説明するのではなく、その場を再び生きてみる。

Technique 01

ロール・リバーサル

相手の立場に立って演じてみることで、「この人も傷ついていたんだ」「私が断っても、相手は壊れないかもしれない」という新しい気づきが生まれます。

Technique 02

ダブリング(分身)

「本当はこう感じていたんじゃないの?」と言葉にされるとき、ずっと抑えてきた感情が初めて表に出ることがあります。

Technique 03

ミラーリング

自分の行動や表情を外から観察することで、無意識に繰り返してきたパターンに気づくことができます。

Technique 04

シェアリング

ドラマの後、参加者が自分の体験を語り合う場。「私だけじゃない」という感覚が孤立感を溶かします。

05

新しいロールは、「演じる」ことから始まる

「まだ自分のものになっていないロール」を安全な場所で試してみること——それがサイコドラマの核心のひとつです。

たとえば

断れなかった自分が、舞台の上で初めて「今回はできません」と言ってみる。
感情を出せなかった自分が、温かい場の中で初めて「怖かった」と声に出してみる。

その体験は、頭で「そうしよう」と決めることとは全く違う、身体に刻まれる体験です。心理療法では、この体験を「修正感情体験」とも呼びます。

06

変わることは、捨てることではない

固着したロールを変えることは、「古い自分を捨てること」ではありません。かつてのロールは、その時代の自分を懸命に守ってくれた存在です。変えることとは、それに感謝しながら、今の自分にはもっと別の選択肢がある、と気づいていくことです。

「わかっているのに変えられない」——そのもどかしさを感じているなら、それはすでに、新しいロールへの扉の前に立っているサインかもしれません。

繰り返しの中に、
気になるものがあるなら。

カウンセリングやサイコドラマのワークショップで、一緒に探ってみませんか。安全な場所で、新しいロールを試す体験がここにあります。

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臨床心理士・公認心理師 桐生大輔

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