うまくいかなかったとき、真っ先に「自己嫌悪」の感情が登場していませんか?
頭では分かっているのに、どうしても自分を責め続けてしまう——そんな経験はないでしょうか。今回のコラムでは、「健康な自己愛」がなぜ育ちにくいのか、そしてどうすれば育てていけるのかをご紹介します。
「また失敗した……私はどうしてこんなにダメなんだろう」
「うまくいかなかったけど、十分やれていたよ。次に活かせる」
自己愛と自己嫌悪の根っこにあるもの
なぜ、健康な自己愛よりも自己嫌悪ばかりが顔を出してしまうのでしょうか。この心のあり方は、私たちがこれまで経験し、学習を積んできた結果に大きく影響されています。
心理療法では、子どもの頃に周囲の大人から「ありのままの自分を肯定して映し出してもらう」ことが、健康な自己愛の土台になると考えます。
たとえば、子どもが夢中で泥だんごを作っている場面を想像してみてください。周囲の反応によって、心のあり方はずいぶん変わります。
自分のしたことへの評価と、それに伴う感情の経験は、大人になってからの自己愛・自己嫌悪に深く影響を及ぼします。
子どもの頃のネガティブなイメージと、大人の自分
小さい頃に培った自分についての「否定的なイメージ」は、非常に根深いものです。心理療法では、これを幼少期の経験によって深く刻み込まれた「心の癖」と考えます。
子どもの頃の自分は無力であり、大人からの否定的な評価を自力で払拭することは難しかったはずです。成長するにつれて、さまざまなことをこなせるようになっているにもかかわらず、「ネガティブな心の癖」があると、大人になってもそのイメージを引きずり続けてしまいます。
今の自分なら客観的に対処できるはずの仕事のミスでも、幼い頃に否定された感覚が蘇り、「また失敗しちゃうんじゃないか」「良い評価をもらえないのでは」と、強い自己嫌悪や不安を引き起こしてしまう——そんなパターンです。
不安は「原動力」にもなる
もちろん、不安そのものは決して悪いものではありません。心理学的な観点からも、不安という感情は時に役立つものです。
「うまくいかなかったらどうしよう」という不安があるからこそ、「じゃあ、準備しようか」「前回のここが良くなかったから、こう変えてみよう」と、改善のための強い原動力になります。
「失敗もするけれど、うまくいっていることもたくさんある。
それは自分に柔軟性があり、いろんな経験をして生きているからだ」
こうして客観的な事実に基づき、自分を認めることも自己愛を育てる上でとても大切です。
心理療法で「自分をいたわる」体験を
とはいえ、長年の「自己嫌悪の癖」を一人で変えるのはとても難しいことです。心理療法には、自分をいたわり、思いやり、リスペクトして、「健康な自己愛」を育てるさまざまなアプローチがあります。
たとえば、過去の出来事や心の中の葛藤を、安全な空間で「やり直す」ような方法があります。
今いる場所は安全であることを確認する。
たとえば、椅子に座って足が床にしっかりついていることを感じる、部屋の中を見回して「ここは安心できる場所だ」と声に出してみるなど、「今・ここ」の安全を自分の感覚で確かめます。
自分の強みを再認識する。
たとえば、「困ったとき周りに相談できる」「継続して取り組める粘り強さがある」「人の気持ちに敏感に気づける」など、これまでの経験の中で発揮できた力を、ひとつでも思い浮かべてみます。
子どもの頃に「つまらないことをして」と否定された場面をイメージの中で再現する
そこに今の「大人のあなた」が登場し、傷ついている子どもの自分のそばに立つ
「泥だんご作り、すごく上手だね!面白いね!」と、当時かけてほしかった言葉を直接伝えてあげる
過去のネガティブな体験を温かい体験として「やり直す」ことで、心に滞っていた自己嫌悪を解放していく
また、自分自身に「思いやり」を向ける練習も大切にされています。
自分を「なんてダメなんだ」と責めそうになったとき、こう問いかけてみます。
「大切な友人が同じ失敗をしたら、なんと声をかけるだろうか?」
そして自分自身に対しても、「あの状況なら誰だって失敗してしまうよ」「よく頑張っていたよ」と、優しい言葉をかける練習をしていきます。
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