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「なりたい自分」には、二つの道がある

夢を叶える、仕事で成功する——それも自己実現です。でも、それだけではありません。「本当の自分に近づいていく」という、もうひとつの自己実現について、具体例とともにお伝えします。

「なりたい自分」に、二つの道がある——自己実現とカウンセリング | みんなの心理相談室 cont-e
コラム / 自己実現とカウンセリング

「なりたい自分」には、
二つの道がある

夢を叶える、仕事で成功する——それも自己実現です。でも、それだけではありません。「本当の自分に近づいていく」という、もうひとつの自己実現について、具体例とともにお伝えします。

桐生 大輔(臨床心理士・公認心理師) 読了時間 約8分
達成型 存在型 なりたい自分

「自己実現」という言葉を聞くと、多くの方が「夢を叶える」「仕事で成功する」「目標を達成する」といったイメージを思い浮かべるのではないでしょうか。もちろん、それも自己実現の大切な形です。ですが、心理学がずっと大切にしてきた自己実現には、もうひとつ別の姿があります。それは、「自分が本当はどうありたいのか」を探しながら、少しずつそこに近づいていくという、静かで、時には無意識的な歩みです。今日は、この二つの自己実現についてお話しします。

01

「自己実現」と聞いて、まず思い浮かべるもの

わかりやすい自己実現は、「何かを成し遂げる」形をしています。目標があり、努力があり、達成という結果がある。とても具体的で、周りからも「叶ったね」とわかりやすい形です。

資格を取って独立する 仕事で昇進・キャリアアップする 起業して事業を軌道に乗せる 絵や文章など、作品を完成させる マラソン完走・大会での結果 語学を習得し海外で暮らす

こうした「達成型の自己実現」は、目に見える形で自分の成長や努力の証を得られるため、大きな自信や充実感につながります。cont-eのカウンセリングでも、こうした目標に向けた歩みのサポートはもちろん行っています。

02

実はもうひとつある——「在りたい自分」に近づいていく自己実現

心理学者アブラハム・マズローは、自己実現を単なる「目標達成」としてではなく、その人がその人らしく、より深く、より本来の姿で「在る」こととして捉えていました。これは目標のように、期限を決めて到達するものではありません。むしろ、「自分は本当はどうありたいのか」「何を大切にしたいのか」を、少しずつ探しながら近づいていく、終わりのないプロセスです。

このタイプの自己実現は、本人にもはっきり言葉にできないことが多くあります。無意識のうちに「こうあるべき」という他者の期待に合わせて生きてきた方が、カウンセリングの中で初めて「自分が本当に望んでいたのはこれだったのか」と気づくことも少なくありません。

達成型の自己実現
  • 目標・成果が明確
  • 周囲からも見えやすい
  • 「できた/できない」で測れる
  • 比較的、意識的に取り組める
存在型の自己実現
  • 「在りたい自分」を探す過程そのもの
  • 本人にも見えにくい・言葉にしづらい
  • 「近づいている感覚」で測る
  • 無意識に働きかける部分が大きい
03

「成功しているのに、なぜか満たされない」——その奥にあるもの

実際のカウンセリングでよくお聞きするのは、「目標は達成できているのに、なぜか虚しさが残る」というお話です。次は、実際にあり得るやりとりを、イメージしやすいよう簡略化してご紹介します。

場面|昇進を果たしたばかりの30代クライエントとのセッション
クライエント

やっと昇進できたんです。でも、思っていたような達成感がなくて……。次は何を目指せばいいのか、よくわからなくなってしまって。

カウンセラー

目標には辿り着いたのに、心のどこかがまだ満たされていない感じがあるんですね。もし「昇進する」という目標がなかったとしたら、あなたはどんな自分でいたかったですか?

クライエント

……考えたことがなかったです。ずっと「次に何を達成するか」ばかり考えていた気がします。

カウンセラー

では少し、想像してみましょう。誰にも評価されなくても、「これができている自分なら安心できる」——そう思える瞬間があるとしたら、それはどんな瞬間でしょうか。

この問いかけをきっかけに、このクライエントは「誰かに認められること」を追いかけ続けてきた自分と、「本当は穏やかに、人と深く関われる自分でありたい」という、これまで意識してこなかった願いに気づいていかれました。
04

cont-eのカウンセリングが大切にしていること

「在りたい自分」は、頭で考えるだけではなかなか見えてきません。cont-eでは、対話に加えて、サイコドラマ的な視点(役割を通じて自分を見つめる手法)も取り入れながら、言葉になる前の感覚や、無意識に近い部分にもゆっくりと目を向けていきます。

1
今の状態を言葉にする
例:「頑張っているのに満たされない」「何がしたいのかわからない」——まずは、今感じているモヤモヤをそのまま言葉にしていきます。
2
「役割」から少し離れて、自分を眺めてみる
例:「親として」「会社員として」ではなく、そのどれでもない「一人の人間として」の自分に、椅子を一つ用意して座ってもらうように問いかけます。
3
具体的な場面・感覚を通して探る
例:「その理想の自分は、どんな表情をしていますか」「誰と、どんな時間を過ごしていますか」——抽象的な問いではなく、具体的なイメージを通して輪郭をつかんでいきます。
4
気づきを、日常に少しずつ橋渡しする
例:「今週、その理想の自分だったら選びそうな小さな行動を、一つだけ試してみる」——大きな変化ではなく、小さな一歩から始めていきます。

達成型の目標がある方には、その目標に向かうプロセスを一緒に整理しながら、同時に「その目標の奥に、どんな在りたい自分があるのか」にも目を向けていきます。二つの自己実現は、対立するものではなく、多くの場合、重なり合っているからです。

自己実現とは、遠くの目標に辿り着くことだけではなく、
今この瞬間、少しずつ自分に正直になっていくことでもあります。

05

よくあるご相談の例

実際のご相談でよくあるパターンを、複数のケースを組み合わせた一例としてご紹介します。

30代・女性・会社員
「昇進や資格取得は順調。でも心が置き去りになっている気がする」
仕事の目標は着実に達成してきたものの、達成のたびに次の目標を探すことに疲れを感じるように。「頑張ること」以外の自分がわからなくなっていました。
カウンセリングでは 「頑張らなくても価値がある自分」という感覚を、幼少期の体験も振り返りながら少しずつ言葉にしていきました。目標を手放すのではなく、目標の「奥にある願い」を意識できるようになったことで、達成そのものへの焦りが和らいでいかれました。
40代・男性・会社員
「子育てが一段落し、自分が何をしたいのかわからなくなった」
これまで「良い親」「頼れる会社員」としての役割に集中してきた分、その役割が少し軽くなった今、「自分は何者なのか」という感覚が薄くなっていました。
カウンセリングでは 役割を通してではなく、「一人の人間としての自分」に焦点を当てる時間を作りました。子どもの頃に好きだったこと、忘れていた興味を一つずつ拾い上げていく中で、少しずつ「これは自分がやりたいことかもしれない」という感覚が戻ってきました。
20代・女性
「資格取得という目標はあるが、達成しても満たされない予感がある」
明確な目標を持ちながらも、「これを達成したところで、本当に自分は変われるのだろうか」という漠然とした不安を抱えていました。
カウンセリングでは 「資格を取った後の自分」を具体的にイメージし、役割を通して体験してもらうワークを行いました。その中で、「資格そのものより、”人の役に立てている実感”が欲しかった」という、より深い願いが見えてきました。

※上記は、複数のご相談を組み合わせて再構成した一例です。特定の個人を示すものではありません。

あなたの「なりたい自分」は、どちらの形をしていますか

目標に向かって進みたい方も、「自分が本当はどうありたいのか」を探したい方も。cont-eでは、お一人おひとりのペースで、その両方に寄り添うカウンセリングを行っています。

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浜松市・三方原町 臨床心理士・公認心理師・TPAサイコドラマディレクター 桐生 大輔

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