お子さんの「見て学ぶ力」を理解しよう~認知処理過程のやさしい解説~
この「見る」という何気ない行為の裏では、小さな脳の中で驚くほど複雑で精密な情報処理が行われています。
お子さんの「見て学ぶ力」を理解しよう
~認知処理過程のやさしい解説~
目とカラダの発達教室 cont-e|浜松市・三方原町
子育て中のお母さん・お父さんなら、お子さんが初めて見るものにじっと見入っている姿を何度も見たことがあるでしょう。赤ちゃんが自分の手をじっと見つめたり、幼児が絵本の絵を指差して「これなあに?」と聞いたり。実は、この「見る」という何気ない行為の裏では、小さな脳の中で驚くほど複雑で精密な情報処理が行われています。
公園でお子さんと一緒にいるときを想像してみてください。滑り台で遊ぼうとしたお子さんが、急に走ってきた他の子を見て、ピタッと立ち止まったとします。この一瞬に、お子さんの脳では何が起きているのでしょうか?
この記事では、この身近な場面を手がかりに、「見る」から「分かる」「動く」までの脳の情報処理の流れを、専門用語をできるだけかみくだきながらご紹介します。
「見る」から「分かる」までの道のり
まず最初に、目に映った光の情報が電気信号に変わって脳に送られます。これは、デジタルカメラが光をレンズで捉えて画像データに変換するのとよく似た仕組みです。この信号は脳の後ろ側にある「後頭葉」という場所に届き、ここで最初の情報整理が始まります。
先ほどの公園の場面で言えば、後頭葉が最初にとらえるのは、「動いている何かがある」「その色は青っぽい」「だんだん近づいてくる」といった、まだ意味づけのされていないシンプルな情報の仕分け作業です。たとえば、キッチンで冷蔵庫を開けたときに、お子さんがまず「白くて四角いもの」という形の情報だけを一瞬でとらえるのも、同じ後頭葉の働きによるものです。
脳の中の「二つのルート」
ここからが面白いところです。脳は情報を効率よく処理するために、二つの専門ルートに分けて作業を進めます。
走ってくる子がどこにいて、どのくらいの速さで、どちらの方向に向かっているのかを瞬時に計算します。「このままだとぶつかりそう!」という判断をするのはこのチームの仕事です。
走ってくる「それ」が何なのかを判別します。動物なのか、人なのか、そして「自分と同じくらいの子ども」だと認識するのも、このチームが担当しています。
お子さんが滑り台の前で一瞬立ち止まったのは、この二つのチームが「走ってくるのは同年代の子で、このまま滑ると危ないかも」という情報を統合した結果なのです。
最終的な「判断」はどこで?
そして、これらの情報は脳の司令塔である「前頭葉」に集められます。前頭葉は、お子さんの過去の経験や感情と照らし合わせて、最終的な判断を下します。
以前、滑り台で他の子とぶつかりそうになって怖い思いをしたことがあるお子さんなら、前頭葉は過去の記憶を呼び出し、「今回は待とう」と判断するかもしれません。
逆に、活発な性格で新しい友達と遊ぶのが大好きなお子さんなら、「一緒に遊べるかも!」とポジティブに近づいていくかもしれません。
同じ「見る」でも、そこから先の判断はお子さん一人ひとりの経験によって変わってくる――ここが子育ての面白さでもあり、悩みどころでもありますね。
子育てに活かせる4つのポイント
この認知処理の流れを理解すると、日々のお子さんとの関わり方にも新しい視点が生まれます。具体的な場面と一緒にご紹介します。
お子さんが新しいものをじっと見ているときは、脳がフル回転で情報処理をしている証拠です。「早くしなさい」と急かさず、十分に観察する時間を与えてあげましょう。
見ているものを言葉にして実況してあげることで、お子さんの「形・意味チーム」の働きを助けることができます。
スーパーの買い物中に「トマトは赤いね、丸いね」と一緒に言葉にするのも同じ効果があります。
道路で車が来ているときなど、お子さんの「位置・動きチーム」がまだ未熟な場合は、大人が代わりに危険を言葉にしてサポートしてあげることが大切です。
こうした具体的な声かけの積み重ねが、お子さん自身の「位置・動きチーム」の発達を後押しします。
お子さんの前頭葉での判断力を育てるには、さまざまな経験が必要です。安全な環境で多くのことを見て、触れて、感じる機会を作ってあげましょう。
「見る」という何気ない行為の裏で、お子さんの脳はこんなに一生懸命働いています。今日からお子さんの「見つめる表情」を見るとき、その小さな頭の中で起きている素晴らしい情報処理の世界を、少しだけ思い浮かべてみてください。きっと、いつもの子育てがもっと愛おしく感じられるはずです。
目とカラダの発達教室 cont-e
視覚機能や運動機能の発達について、専門的な視点からサポートしています。お子さんの様子で気になることがあれば、お気軽にお問い合わせください。
