空間を認知するということ。ビジョントレーニング
空間認知のお話し。
人が置かれた環境の中で、位置や方向などの空間的関係の知識を獲得・記憶し,それに基づいて行動したり判断したりする能力のこと。
私たちが、自宅のトイレに到達できるのも、決められた席に座れるのも、片付けができるのも、この空間認知機能のおかげです。
私が自動車の設計をしていた頃は、図面はまだ手書きでした。3次元の世界を紙面上に描くことができたのは、空間認知のおかげでした。
日常の生活だけでなく、スポーツや仕事などにも幅広く活用される機能です。
子どもたちは、レゴを上手に組み立てます。この時も、マニュアルを見ながら、自分の作っている状況と照らし合わせて、視野を広くとって全体的に状況を把握したり、手元を見て組み立てたレゴの数や色を確認するなど部分的に確認していきます。それと同時に、これからの作業イメージを膨らめ、次は何をするのか計画を立てて実行して、行動の修正を図りながら完成に向かって作業を進めていきます。
楽しいはずの活動を楽しめない、生活動作の習得がうまくいかないお子さんの背景には、この空間認知が影響しているのかもしれません。「成功体験をさせてあげたい!」といった声をよく聞きますが、そのためには、こうした認知機能や認知操作の力を育てることが不可欠です。
そもそもビジョントレーニングには、この空間認知をフル活用するトレーニングですから、生活や仕事、スポーツといった活動に必須な土台作りに大いに役に立つトレーニングということになります。地味で、「これが何になるの?」とわかりにくいトレーニングかもしれませんが、
では、どうしたら、子どもの空間認知の力を高めるにはどうしたらいいのでしょうか?
A:徹底的に「遊び」ましょう!
- お宝探しゲーム!
砂場に穴を掘ってお宝を埋めて、宝物探しをしましょう。おやつを部屋のどこかに隠して、お菓子探しをするのもよいかもしれません。「ここはもう見たのよな?」となれば、空間の把握が必須ですし、記憶力も刺激されます。
また、探し始める前に、「前回はここにあったよな?」「お母さんの性格からして…」と、予測を立てる、記憶を検索する、分析するなど、思考力を高めることにつながります。
- 食事前に、子どもさんにお皿を並べてもらいましょう。
お茶碗は、お味噌汁は、お箸はどこに置く?テーブルという空間をいかに活用するかを学ぶことができます。右手でお箸、左手でお茶碗。必然的にお茶碗は左側に置く。左上位といった文化的背景があるなど諸説ありますが、何気なくしていう人の活動にはこうした意味がある。といった親子の会話は、ものごとの本質を知る、見分を広めるといった機会になります。
自分の机の上の使い方が上手になれば、情報収集に苦労も少なくなります。集中力も高まります。ものを落として無くなる、注意が逸れることも避けられるようになります。空間をうまく使うということは、こうしたことにもつながります。
- 折り紙、あやとり、プラモデル、ラジコン、積み木やブロック、パズルで遊びましょう。
何かとテレビゲームやスマホで遊ぶ。Youtubeの実況で満足してしまう。そんな時代になりましたが、アナログな遊びを子どもたちには提供したいものです。親やおばあちゃんからあやとりの技を教えてもらう(真似は自分の能力を高める)。プラモデルであれば、説明書を読みながら、手に持った物をくるくると回転させたり、部品と部品との関連性を想像したり、接着剤を塗りながら、次の作業を予測する。空間認知なけでなく、色や形態、図形認知能力、視知覚情報の統合力など、いろんな機能がこうした遊びによって鍛えられます。
- 地図を見て目的地を定める。地図を見ながら移動する。
例えば、動物園に行ったら、まずは、園内の地図をもらいます。親が決めるのではなく、子どもたちに計画を立てされましょう。同じところを何度も通ったり、往復したり、無駄も多いですがそれも愛嬌です。<できるだけ、歩く距離を少なくするには?>などの働きかけで子どもたちの思考力はグンッと働きます。
空間認知が育つことで、奥行きの感覚、距離感、位置関係などを正確に捉えることができるようになります。空間認知によって移動が生まれる。移動によって時間の認知が生まれます。空間認知の精度が高まることで、活動の成功率、効率性、合理性も高まります。それによって楽しさが増し、ストレスも軽くなって意欲も高まる。そして、さらに空間認知力が高まっていく。そうした成長に、大人が見守り、適度な教示を加えるといった関与をすることで、人間関係の土台も育ちます。
そんな両得を得るための究極のおすすめ活動は、キャッチボールです。あまり、深いことを考えず、わが子が、ボールを投げられるようになったこと、私に向かってわが子がボールを投げようとしていること、遠く離れていてもボールは届くことを、ただ、ただ、嬉しく思いながら。