お子さんの「できた!」を育む日常のかかわり
~毎日の生活が、心と体を育てる大切な時間です~
「自分でできるようになってほしい」―そう思いながらも、朝の忙しい時間についつい手を出してしまうこと、ありませんか? 実は、日常生活の中でお子さんが「できるようになる」プロセスを丁寧にサポートすることは、単なる生活習慣のしつけを超えて、お子さんの心と体の成長にとても大きな意味があるんです。
💛 心の成長への影響
「ぼく(わたし)、できる!」という自信が育ちます
ボタンをとめようと何度も挑戦して、最後にパチンととまった時の誇らしげな顔。スプーンでこぼさずに口まで運べた時の「見て見て!」という表情。こうした小さな成功体験の積み重ねが、「自分はやればできるんだ」という自信を育てていきます。
具体例:
- 靴下を履くとき、「ここに親指を入れてみようか」と声をかけて見守る
- 牛乳を注ぐとき、「コップを両手で持とうね」と伝え、少しこぼれても「惜しい! もう少しだったね。次はゆっくりやってみよう」と励ます
- お片付けで「この車はどこの箱かな?」と一緒に考え、自分で選ばせる
大人が全部やってあげるのではなく、「できるように導く」ことで、お子さんの中に「やってみよう」という意欲が生まれます。この力は、小学校での学習や友達との関係づくりにもつながっていきます。
「見守られている」安心感が探索心を支えます
お子さんが新しいことに挑戦するとき、「ママ(パパ)がそばにいてくれる」という安心感がとても大切です。身支度や食事など日常の場面で、保護者が優しく丁寧にかかわることで、お子さんは「自分は大切にされている」と感じます。
この安心感があるからこそ、お子さんは安心して新しいことに挑戦できるようになります。発達心理学では、これを「安全基地」と呼んでいます。
具体例:
- 着替えに時間がかかっても、「ゆっくりでいいよ。できるまで待ってるからね」と声をかける
- 上手にできなくても「頑張ったね。難しかったね」と気持ちを受け止める
感情をコントロールする力が育ちます
ボタンがうまくはまらずイライラしたり、できた時に喜んだり―日常生活の中には、さまざまな感情を経験する場面があふれています。そんな時、保護者が「悔しかったね」「できて嬉しいね」と共感してくれることで、お子さんは自分の気持ちを理解し、少しずつコントロールする方法を学んでいきます。
具体例:
- ファスナーが上がらず癇癪を起こした時、「難しくて悔しいよね。一緒にやってみようか」と寄り添う
- お茶をこぼして泣いている時、「びっくりしたね。大丈夫、一緒に拭こうね」と落ち着きを取り戻せるようサポートする
💪 体の成長への影響
手先の器用さと体の使い方が育ちます
ボタンをとめる、スプーンを使う、靴を履く―こうした動作は、目で見て、手を動かして、力加減を調整するという、複雑な協力プレーです。繰り返し経験することで、手先が器用になり、自分の体を上手にコントロールできるようになります。
具体例:
- フォークで刺すとき、「プスッと刺してみよう」と一緒に手を添えて感覚を伝える
- ズボンを履くとき、「座って、片方ずつ足を入れてみようか」と手順を示す
- おもちゃの蓋を開けるとき、「ぐっと力を入れて、回してみて」と動作を言葉にする
考える力・計画する力の土台ができます
「次はどうするんだっけ?」「どうしたらうまくいくかな?」―こんな声かけを重ねることで、お子さんは自分で考え、計画し、失敗したら修正するという力を身につけていきます。これは脳の「実行機能」と呼ばれる、将来とても大切になる力です。
具体例:
- 朝の準備で「パジャマを脱いだら、次は何を着るんだっけ?」と順序を意識させる
- 手を洗うとき「最初は水、次は何つけるかな?」と手順を一緒に確認する
- 失敗した時「どうしたらうまくいくかな? もう一回やってみる?」と考えるきっかけを作る
🌱 毎日の積み重ねが、お子さんの未来をつくります
日常生活の中でお子さんを「できるようにサポートする」ことは、
- 自立への第一歩であると同時に
- 心の安定と成長を支えるものでもあり
- 脳の発達を促す最高の環境づくりでもあります
忙しい毎日の中で、すべてを完璧にする必要はありません。朝の着替えの時、食事の時、お風呂の時―ほんの少しの時間、お子さんのペースに合わせて「できるようになるまで待つ」「一緒にやってみる」そんなかかわりが、お子さんの心と体を大きく育てていきます。
「できた!」という小さな達成感の積み重ねが、お子さんの人生を支える大きな力になっていくのです。
※お子さんの発達段階や個性によって、「できること」のペースは様々です。焦らず、比べず、目の前のお子さんの「今」を大切に見守っていきましょう。