どうして何度言ってもできないの?
「だからハンカチ持ったか確認しなさいって言ってるでしょ!」「ゲームの時間は終わりって言ってるでしょ!」・・・保護者を悩ます「何度言ってもできない」問題。
ラケットでボールが打てるようになる。自転車に乗れるようになる。生活動作も身体動作を使うので、「スキルの習得」という意味では全く同じこと。そうです、適応的な動作を初めて習得するためには、記憶をもとに動作を再現し、それを繰り返し練習するということが必要になるわけです。
新しいスキルの習得には、次のような記憶が働いています。
1. 感覚記憶 (Sensory Memory)
- 動作の習得には視覚、聴覚、触覚などの感覚情報が重要です。
- 例えば、新しいスポーツの動きを学ぶとき、コーチの指導やデモンストレーションを一時的に保持し、認識します。
2. 作業記憶 (Working Memory)
- 目の前の情報を一時的に保持しながら、それを処理し、適切な動作を選択します。
- 例えば、ダンスのステップを学ぶ際、指導者の動きを見ながら、それを自分の体で再現しようとします。
3. 手続き記憶 (Procedural Memory)
- 適応的な動作の習得には、手続き記憶が重要です。これは「体で覚える」タイプの記憶で、繰り返しの練習を通じて強化されます。
- 初めて自転車に乗るとき、最初はぎこちない動きですが、練習を重ねるうちに無意識にバランスを取れるようになります。
4. エピソード記憶 (Episodic Memory)
- 初めての経験や学習時の状況が記憶され、類似の状況での動作選択に役立ちます。
- 例えば、「以前、この動作をしたときは成功した」という経験が、次の試行時に活かされます。
5. 意味記憶 (Semantic Memory)
- 運動学習に関する知識やルールを蓄積し、動作の理解を深めます。
- 例えば、テニスを学ぶ際に「フォアハンドはこういう形で打つ」という知識を蓄積し、応用できるようになります。
6. 長期記憶の統合
- 反復練習を行うことで、作業記憶にあった情報が長期記憶に移行し、動作が自動化されます。
- これにより、意識せずにスムーズな動作ができるようになります。
まとめ
初めて適応的な動作を習得するとき、感覚記憶 → 作業記憶 → 手続き記憶・エピソード記憶 → 長期記憶という流れで情報が処理・蓄積され、最終的に自動化されていきます。繰り返しの練習が、記憶の強化と動作のスムーズな実行につながります。大人がこれに付き合うのはなかなかに難しい作業というわけです。「何度か言っていればできるようになるだろう…」なかなかそうはいかない理由もこの辺にありそうですね。指示だけでなく、指導(身体的にかかわる)も必要になる、だから大人は大変になるわけですね。
それは頭ではわかっているけど、実際に子どもに実行していく余裕とスキルが大人側にない・・・というのが現実。家庭だけでやろうとすると大変。保護者が全部やろうなんて無理です。そうです。子育て、子どもを大人に育てるというのは大変な苦労が伴うということ。だから、子どもは社会で育てる必要がある。忙しい両親が効率よく、ストレス少なく、子どもが生きていくために必要なスキルを習得させるためには知識を知り、子育てスキルを習得していくことも必要になるわけです。大人も子どものともに成長というわけですね。
そのためにも、私たち専門家がお手伝いをできたら…困ったときには、お気軽にご連絡くださいね。