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ちゃんと見なさい!

「ちゃんと見なさい!」…昔からよく怒られたものです。

本人はちゃんと見ているんですけどね。でも、なぜか食事中にコップのお茶がよくこぼれるんです。ソースが倒れるんです。

そんな時の、「ちゃんと見なさい!」なんです。

下の写真、ローストビーフ丼です。おいしそうです。

(我が家で食卓に上がることはめったにないですね)

それはさておき…。

図①と②の画像は両方とも同じ画像です。一番外側の楕円は視野(見えている範囲)を示しています。緑色のぼんやりと見えている領域と、楕円中心のハッキリと見えている領域があります。

※緑色のぼんやりゾーンを「周辺視野」、ハッキリ見えるゾーンを「中心視野」といいます。

図①の画像は、ハッキリと見えている領域(中心の楕円の領域)が広いです。

一方、右側はハッキリと見えている領域(中心の楕円の領域)が狭いです。

この時、角膜や網膜など生理学的な問題はないものとします。

いったい、どんなことが起こっているのでしょうか?

図①の写真は、目が取り入れた光情報を視神経を通じて脳(視覚野)に送り、より広範囲の情報を処理して、知覚(見える)している、ということになります。

その反対に、図②では、目が取り入れた光情報は脳に送られますが、その情報処理の範囲は図①に比べて狭く、ゆえに、知覚(見える)している領域が狭い、ということになります。いわゆる、「視野が狭い」と言われる現象です。なので、どんぶりの横のコップは認知(認識)されていないということになります。

角膜や網膜に異常があるわけではないのに、見える範囲には個人差が生じるわけです。確かに、姉がコップを倒す機会はとても少なかったです。慎重に周囲を見ている人でした。

また、こんなにおいしそうなものが食卓に上がっていれば、テンションもMaxです。そんな精神的な状況は、さらに注意の範囲を狭めて、周りを見えにくくします。まさに、ローストビーフにロックオン、狙った獲物は逃がさない状態です。それは、さらにコップの存在を認知(認識)させないことになります。

僕は、ローストビーフ丼を「ちゃんと見ている」んです。誰よりも早く、おいしく食べきる自身があるのです。

しかし、次の瞬間…右手にお箸を取り、どんぶりの底めがけてお箸を突っ込もうとした、その時!

ウーロン茶の入ったコップをおもむろに倒し、テーブルの上には瞬く間に世界地図が広がっていく。そして、母親を鬼と化して、周囲を凍りつかせるのです。

「だいすけ!ちゃんと見てなさいって、いったでしょ!!!!!」

私は、ちゃんと見ていたのです。

しかし、より広範囲で視覚情報を知覚し、その情報をもとに考えられるリスクを想定し、それを避けるためにあれこれと思考し、身体をうまく動かして何事もなくローストビーフ丼を間食する。そういった、認知‣運動機能をバランスよく、じょうずに発揮することができなかったのです。

ここに、「ちゃんと見てなさい!何度同じことをいわせるんだ!」の原因が潜んでいたのです。

そんな発達凸凹が、日常生活に不便を生じさせ、周囲の表情を凍らせる事態を生じさせる…。

こんな思い、子どもたちに極力してほしくない。

なので、ビジョントレーニングをします。

ビジョントレーニングでは、アセスメントをして、こうした視野の狭さがある方に、中心視野の周辺、「周辺視野」を広げるトレーニングをしていきます。ローストビーフ丼をしっかりと凝視しつつ、「ねぇ、ねぇ、ローストビーフ丼のほかに何が見える?」と、子どもたちに働きかけます。

お手玉などの昭和の遊び道具、アナログな道具や遊びを活用して、「周辺視野」を広げたり、空間を瞬時に把握してその情報をカラダと連動させる。

視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、前庭覚、固有覚、原始反射…人間には本当にいろんな機能が備わっています。だから、誰だってこの機能の連動・連合の苦手は生じるものですし、人それぞれに日常生活の不便が生じるものです。

得意を延ばすも大事だけれど、苦手がじょうずになるを大事にしたい。ゆっくり、こつこつ。うまくできなくても、結果がでなくても、他者に支えられ、励まされ、繰り返し取り組んだその経験は、何よりも自信につながる。そして、自分は何者かを知ることになる。

May the force be with you !

図① 中心視野が広い
図② 中心視野が狭い

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